小説「愛日常」
週末 予定




翌朝、目が覚めたベッドの中で後悔していた。

なんで昨夜はあんなに熱くなってしまったのだろう。

初めて会った人たちに本心をさらけ出してしまうなんて。


せっかくの週末は、あっという間に終わってしまった。

何をしていたのだろう。

ビデオを借りて、食事を作って、

洗濯して、なんだかそれで終わってしまった気がする。

多摩川沿いを走って鈍った身体を鍛えるつもりだったのに、

結局走らなかった。


あの夜に僕が言ったこととはまるで逆だ。

何もしていない。

せっかくの週末を何もせずに終わらせてしまった。

よくあることだ。

何もしなかった、という実感は毎回自分を苦しめるのだが、

本当はそんなこと考えなくてもいいのかもしれない。

きっと、考え過ぎなのだ。

こんなことで悩んでいるのは僕だけに違いない。

週末は平日の疲れを癒すためのものだろう。

何かをする必要はない。元々何もしなくていいんだ。

やりたいことだけを適当にやっていればいいじゃないか。


そうだ、僕は考え過ぎだ。

一日をやり終えたはずなのに、毎晩僕はそのまま眠れない。

何かやらなくちゃいけないことがあるんだって思い込んでいるから、

夜だって何か時間が惜しくて、でも仕事をした後の夜なんて

大したことできるわけないのに、

やっぱり何かやらなくちゃいけないんじゃないかって思い込んでいる。

こんな生活ばかり繰り返してきた。

早く眠れば明日が楽なのに。解決できないこの心。


金曜日はどうしよう。

言い出した本人が行かないのはまずいよな。

でも、名前も連絡先も知らない人たちだ。

気が向いたら行けばいい。

大体さ、仕事が忙しいんだから行けるとは限らないじゃないか。


そして平日は始まってゆく。

週末のスローな時間が嘘のように、長々と時間を拘束され、

無駄な通勤時間を垂れ流し、やりたいことはできず、

月曜日から金曜日までの五日間がノルマのように思えてくる。

人生は、五日のノルマをクリアしなくては

自由な二日を手に入れることができないのだろうか。

五対二という比率に正当性はあるのか。

そもそも人生の中心はどっちなのか。

毎度ながら、本当に分からない。


僕は悩んでいた。

月曜から火曜、水曜と進むにつれて益々結論が出ない。

――結論が出ない。それは違うのか。

答えはとっくに出ているのだ。ただ、踏ん切りがつかないだけ。

僕は行くしかないだろう。

見ず知らずの彼らが来るとは思わないが、

少なくとも自分自身にけじめをつけるためにも、僕は行かなくてはならない。


木曜日、僕はかなり働いた。

金曜の夜になるべく早く会社を出たかったからだ。

待ちきれなくなっていた。

一度行くと腹を決めたら、一気に新しいイメージの波が押し寄せてきた。


馬鹿正直に本心を吐露してしまったあの夜。

青臭い。センスがない。

だが、あれはあれで良かった。

凡庸とした平日の渦中に思い出せば、なんとドラマティックで、

なんとエキサイティングな一時だったのだろう。

あの続きがしたい。できないか。

あの少女が来るとは思わないが、

あの変わった彼なら来てくれる可能性もゼロではない。

それに、別に誰かと一緒にやる必要もないじゃないか。

自分自身だけでできることだ。



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