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浄楽寺・運慶の不動明王 小説「狂い咲き」6話

投稿日:2010年4月1日 更新日:




夏は終わっていった。

少しずつ涼しくなる夜風を感じると、次の季節のことを心待ちに、私は毎日を過ごすようになる。

あぁ、秋になると、なんだかケンに再会しているような気持ちになるのが、私、嬉しいのかな。

でも、もう彼のことは思い出さなくてもよいでしょ、と自分に言い聞かせてみる。

不動明王の取材は続いていた。

今度は少し遠出をして、横須賀の浄楽寺まで、不動明王に逢いに行った。

年に2回しか開帳されない秘仏、これもまた、あの運慶が創った不動明王。

私が出逢った不動明王は、最初が伊豆の願成就院、運慶の斬新な作品。

それから京都や奈良のお寺で、数多くのクラシックな不動明王を拝見させてもらった。

この前の東寺で、不動明王の時代を遡る旅は終わり。

次はもう一度斬新な不動明王を、と運慶の作品を求めて横須賀の浄楽寺まで行こうと思った。

今まで逢ってきたどの不動明王も素敵だったけど、

運慶が創った浄楽寺の不動明王は、やはり私の心にすっと入ってきた。

武士から求められて創られ、その武士たちに愛された運慶の不動明王、

肉体や表情から溢れるのは、機智と覇気よ。

玉眼という運慶流の手法は、現代人の私が見ても違和感がない。

こんなにリアルな不動明王、武士たちが信仰の対象としたものは分かる。

和田義盛という鎌倉武士に依頼されて、運慶が創ったこの浄楽寺の不動明王。

仕事で創ったものが、依頼主に感謝され、多くの時間の中で

多くの人たちに感謝され、今でも私のような人が訪れては、巡り合いに感謝している。

口下手な私も、記事にならば素直なことが書ける。

今回の記事のテーマは、周囲の人たちへの感謝の言葉にしようと思った。

私の思いつき企画に賛同してくれる会社への感謝、

毎回付き合ってくれるカメラマンの咲希さんへの感謝、

それから雑誌を買ってくれる読者の方への感謝、

たまにコメントを寄せてくれる方へはもっと感謝。

仕事とはいえ、好きなことをさせてもらっているのだから、みんなに感謝しなくちゃ。

きっとそういう感謝の気持ちが積み重なって、日本全国にある仏像は、

数百年、物によって千年以上も姿を保っている。

感謝って大事、人と仏像を千年つないだキーワードが、感謝ってことね。

それもこれも、不動明王から学んだこと。

私ひとりで生み出したものなんかじゃないんだ。

なにより、私は不動明王へ感謝しなくちゃいけないな。







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