倚天の剣が言うよ、「俺からすると、使われてうらやましい」と。
斬りたいのだ、倚天という剣は守るためにあるものではない。
誰かをきらびやかに飾るより、実用的な剣でありたい。
そういう意味では、君主の腰に落ち着くのではなく、武人と共に先陣にいたい。
名より実。
抜かれることもなく、ずっと腰に付いているだけの宝剣なんて我慢ができないんだ。
一方で、曹操という英雄はこう言い張る。
「でもね、倚天の剣。俺みたいな英雄は他にはいないよ?
俺から離れたら、一介の凡人に持たれるかもしれないけど、それでいいの?」
難しい選択だな。
英雄の腰飾りか、凡人の実践的な武器か。
光栄を優先する?
いいや、違うな。
俺は常に戦の現場にありたい。
一長一短なのだろうが、ないものねだりでも、
そう言って倚天の剣は戦場で振るわれる武具としての道を選ぶのだろう。
伝説の名剣だが、僕には1つの疑問がある。
宝の双剣を、あの曹操が持っていたのは納得。
でも、もう1つを持っていたのは誰?
あの曹操と、双剣を二分する大した男がいたの?
夏侯恩。
三国志でほとんど無名であり、ただ青釭の剣を奪われるだけのキャラ設定。
小さな男のはずがないじゃないか、敵将が趙雲とはいえ、易々と討ち取られるはずがないじゃないか。
だって、あの青釭の剣の所持を許されるの才覚を曹操に認められた誰かだよ。
そう考えていくと、その男は夏侯覇でないかと思えてきた。
誰が青釭の剣を持つのに相応しいか?
夏侯氏の若手、 それも実力を見込まれた男こそ、その役を当てられるはず。
これは仮説だが、その将の従者が、青釭の剣を持っていたはず。
だって当時の戦いで名のある将は騎乗していたはずし、馬ならば槍を持っていたはず。
夏侯覇が何か目を離した偶然の時間に奪われたのが青釭の剣ではないか?
趙雲の息子がそう語っていたよ、そのぐらい混乱の最中だったのだ、あの長坂の戦いは。